『ハッピー・デス・デイ』(2017)(監督:クリストファー・ランドン)の概要
作品概要
原題・英題 | Happy Death Day |
上映時間 | 96分(1時間36分) |
制作年 | 2017年 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
メインスタッフ・キャスト
当 | 名前 |
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監督 | クリストファー・B・ランドン(『パラノーマル・アクティビティ/呪いの印』(2014)他) |
脚本 | スコット・ロブデル |
制作 | ジェイソン・ブラム (※ブラムハウス・プロダクションズCEO) |
編集 | グレゴリー・プロトキン |
撮影 | トビー・オリヴァー |
音楽 | ベアー・マクレアリー |
出演 | ジェシカ・ローテ (テレサ・“ツリー”・ゲルブマン役) |
イズラエル・ブルサード (カーター・デイヴィス役) |
予告編
音楽
動画配信(主要サイト)
名前 | Prime Video | U-NEXT | Nexflix | Hulu | Lemino(旧dTV) |
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ロゴ | |||||
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あらすじ
大学生のツリーは、自分の誕生日に同級生のカーターの部屋で目覚める。その日、彼女は何者かに殺害されるが、翌朝また同じ日に戻ってしまう。ツリーは自分が時間のループに閉じ込められていることに気づき、殺人犯の正体を突き止めようと奮闘する。
以下ネタバレ
感想・考察
概要
『ハッピー・デス・デイ』(2017)は、スラッシャー映画とコメディを巧みに融合させた新しいタイプのホラーコメディだ。グラウンドホッグデーのコンセプトを取り入れ、独自の魅力を放つ作品として注目を集めている。クリストファー・ランドン監督がメガホンを取り、スコット・ロブデルが脚本を担当したこの作品は、ジャンルの境界を軽々と超えて観客を楽しませる。
ストーリー概要
主人公のツリー(ジェシカ・ロース演じる)は、自分の誕生日に何度も殺害され、同じ日を繰り返すことになる。彼女は自分を殺そうとする犯人を突き止めながら、自身の人格も成長させていくという、ユニークな展開が待っている。この設定は一見単純に思えるかもしれないが、実際には複雑な心理描写と巧妙なプロット展開が織り込まれている。
ツリーは毎回異なる方法で殺害されるが、その度に前回の経験を活かして状況を変えようと奮闘する。彼女の行動が周囲の人々に与える影響も丁寧に描かれており、バタフライ効果のような現象も見られる。これにより、観客は単なるスリルだけでなく、人間関係や因果関係についても考えさせられる。
キャラクターの成長
物語の中心は、ツリーの人格的成長だ。当初は利己的で嫌な性格として描かれるツリーだが、繰り返される「死」の体験を通じて、徐々に思いやりのある人間へと変化していく。この成長過程が、物語に深みと魅力を与えている。
ツリーの変化は段階的に描かれる。最初は自己中心的で周囲を顧みない態度だったのが、やがて自分の行動が他人に与える影響に気づき始める。そして最終的には、他人のために自己犠牲を厭わない人物へと成長を遂げる。この変化は急激ではなく、細やかな演出と脚本によって徐々に描かれており、視聴者に共感を呼び起こす。
演技の評価
主演のジェシカ・ロースの演技が特に高く評価されている。彼女はツリーの複雑な感情の変化を見事に表現し、観客を物語に引き込む。サポートキャストの演技も秀逸で、全体的に高いクオリティの演技が楽しめる。
ロースは、ツリーの初期の傲慢さから、混乱、恐怖、そして最終的な成長まで、幅広い感情を説得力を持って演じきっている。特に、同じシーンを何度も演じる必要があるにも関わらず、毎回微妙に異なる反応を示す彼女の演技は見事だ。
イスラエル・ブロサードが演じるカーターも、ツリーの良き理解者として重要な役割を果たしている。彼の温かみのある演技が、ツリーの変化を支える重要な要素となっている。
映画の構造とペース
繰り返される「誕生日」の展開に十分なバリエーションがあり、観客を飽きさせない。テンポの良い展開で物語が進行し、時間ループのコンセプトを巧みに利用してストーリーを展開している。
ランドン監督は、同じ日の繰り返しを描きながらも、毎回新しい要素を加えることで観客の興味を維持することに成功している。例えば、ツリーが自分の状況を理解し始めた後は、彼女の行動がより積極的になり、それに伴って物語のペースも加速していく。
また、時間の経過とともにツリーの体力が衰えていくという設定も、緊迫感を高める効果的な要素となっている。これにより、単なる繰り返しではない、進行感のあるストーリー展開が実現されている。
ジャンルミックスの成功
本作は、ホラー映画とコメディの要素を上手く組み合わせている。典型的なスラッシャー映画の要素を取り入れつつも、それらを遊び心を持って扱い、怖さよりもユーモアや娯楽性を重視している。
ホラー要素としては、マスクを被った殺人鬼や、暗い場所でのサスペンスシーンなどが効果的に使われている。一方で、ツリーが何度も死んでは蘇るという設定自体がブラックユーモアの源泉となっており、彼女の死に方のバリエーションが笑いを誘う。
さらに、キャラクター間のやり取りや状況のアイロニーなど、細かいところでもコメディ要素が散りばめられている。これらの要素が絶妙なバランスで融合し、独特の雰囲気を生み出すことに成功している。
他作品との比較
『ハッピー・デス・デイ』(2017)は、時間ループものとしては『恋はデジャ・ブ』(1993)を彷彿とさせるが、ホラー要素を加えることで独自性を出している。また、『エッジ・オブ・トゥモロー』(2021)や『ミッション: 8ミニッツ』(2011)など、SF映画でも同様のコンセプトが使われているが、本作はより軽いタッチで描かれている点が特徴だ。
同じ2017年に公開された『ビフォア・アイ・フォール』(2017)も類似したコンセプトを持つが、『ハッピー・デス・デイ』(2017)がコメディ要素を強く打ち出しているのに対し、『ビフォア・アイ・フォール』(2017)はよりシリアスなトーンで物語を展開している。この対比は、同じコンセプトでも演出次第で全く異なる作品になることを示している。
結論
『ハッピー・デス・デイ』(2017)は、ユニークなコンセプトと巧みな演出で、観客を楽しませる作品に仕上がっている。ホラー映画ファンだけでなく、コメディ映画を楽しみたい方にもおすすめの一作だ。
本作の成功は、ジャンルの垣根を越えた新しい試みが観客に受け入れられる可能性を示している。また、低予算でも斬新なアイデアと確かな演技力があれば、大ヒットを生み出せることを証明した点でも、映画界に一石を投じたと言えるだろう。
『ハッピー・デス・デイ』(2017)は、エンターテインメント作品としての楽しさだけでなく、人間の成長や時間の価値について考えさせる深みも併せ持つ。この多層的な魅力が、本作を単なるB級ホラー映画以上の存在に押し上げているのだ。